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ペットとの生活

ペット版 家庭の医学

第26回 シニア犬の関節症について

第26回 シニア犬の関節症について

人と同じく、犬も歳を取ると歩き方がぎこちなくなり、とぼとぼとした動きになってきます。10歳以上の犬の約半数が関節に問題があることがわかっており、シニアの関節ケアはペットの高齢化に伴い大きな課題となっています。

原因

シニアの関節症は、主に若いころから慢性的に関節内の軟骨がすり減ったり、骨同士がぶつかることによって悪化したものです。
例えば、肥満や過剰な運動、滑りやすい床や段差の多い環境での生活を長く続けると、常に関節に負担がかかるため、関節症を起こしやすくなります。これは特に体重が重い大型犬に多くみられ、ゴールデン・レトリーバー、ラブラドール・レトリーバー、バーニーズマウンテンドッグ、シェパード、セントバーナードなどがなりやすい犬種といわれています。
また、生まれつきO脚やX脚、膝蓋骨脱臼を起こしやすい骨格などで関節が不安定な場合にも、若いころからの関節炎が継続して、高齢になってさらに関節症が進行する傾向にあります。これはトイ・プードル、チワワ、ポメラニアンなどの小型犬種に多く見られます。
さらに免疫介在性関節炎といって、免疫のバランスが崩れることによって自ら関節組織を攻撃することによって発症する関節炎もあり、これはシェットランド・シープドッグやミニチュアダックスフンドなどがその遺伝的素因を持っていると言われています。

症状

トラブルがみられやすい主な関節としては前肢の手根関節(手首の関節)、肘関節、肩関節、後肢の足根関節(足首の関節)、膝関節、股関節などがあります。

関節炎をおこした部位は、滑らかに動かすことが出来ず、動くと痛みが生じるため、歩くときに足を引きずる、立ち上がったり座ったりという動作がぎこちない、段差を登れなくなる、体を触ると痛がる、などの症状がみられます。また、クリック音といって、関節を動かすたびに骨がぶつかるコキコキという音が出るようになることもあります。
初期の段階では、なんとなく散歩に行きたがらないとか、今までよりも遊び方が大人しくなった、などの症状しか見られないかもしれません。しかし、人の関節炎と同様に、気温が下がった時や気圧が下がったときなどは痛みが強くなるため、天気が悪くなると普段より不機嫌になるようなことがあれば要注意です。
少しでも普段と違う様子のときは早めに動物病院で診てもらうようにしましょう。

検査と診断

動物病院では、まず歩き方を見て動きが悪い関節をみつけ、患部に触って可動域や痛みの程度などを調べます。それから、関節の変形などを確認するためにレントゲン撮影やCTによる画像検査を行います。
場合によっては関節部の超音波(エコー)検査で関節内部の状態を調べたり、関節液を抜いて感染や炎症の度合いを調べることもあります。

治療・対応

骨の変形や痛みが強い場合には、外科手術による治療(骨変形矯正術や人工関節置換術など)が行われることもありますが、シニアの関節炎の場合、多くは慢性的に進行したもので根本原因を治すことが難しいため、治療は主に今ある症状(痛みや炎症)を緩和させるものになります。
関節炎がまだ軽症の場合は、炎症をひどくしないように安静第一の処置が行われます。痛みがある場合には消炎鎮痛剤の注射や内服薬などを使用し、痛みを取りながら少しでも動けるようにして、関節周囲の筋肉が衰えてしまわないような対応をしていきます。
また、滑りにくい床に替えたり、室内での段差をなくしたりなどの生活環境の改善や、療法食による肥満の解消、関節軟骨成分をサポートするサプリメントの使用など、食事管理による対応を並行して行う場合もあります。マッサージや鍼灸、ストレッチなどの理学療法が効果的なこともあるため、どうしたらよいのかはかかりつけの先生とよく話し合って行うようにしましょう。

まとめ

高齢のワンちゃんが若いころと同じように走り回れなくなるのは仕方がないことですが、関節症は元気なうちから気を付けてあげれば、発症を遅らせることができます。
痛みがない穏やかな生活が少しでも長く出来るように、今できることは何か、考えてあげてくださいね。