「うちの子は大丈夫」と思っていませんか?
ワンちゃんが人を噛むと聞くと、“しつけができていない犬”とか“気性の荒い犬”といった印象をもたれるかもしれません。しかし、実際には、噛みつきによるトラブルは、どんなワンちゃんにも起こりうることです。
「噛む」という行動の背景には、犬なりの理由があります。恐怖や驚き、強い興奮、あるいは「これ以上近づかないで」というサインであることもあります。急に体を触られた、顔をのぞき込まれた、大きな声を出された、といった人間にとっては何気ない行動でも、ワンちゃんにとっては身を守ろうとするきっかけになる場合があります。
また、疲れているときや体調がすぐれないとき、慣れない環境で緊張しているときには、いつもより反応が敏感になりやすいものです。普段は落ち着いている子でも、刺激が重なれば思わぬ行動に出ることがあります。
特定の犬だけの問題ではなく、状況が重なったときに起こりうること。その視点を持つことが、予防の第一歩になります。
見逃したくない、小さなサイン
多くの場合、犬はいきなり噛むわけではありません。その前に、緊張やストレスのサインを示していることがあります。ここでいうストレスとは、恐怖、驚き、興奮、疲れや痛みなど、そのワンちゃんにとって何らかの刺激や負担となっている状態のことです。
緊張や不安を感じているときには、次のような変化が見られることがあります。
- 体がピンと固まる
- 目をそらす、白目が見える
- しっぽの動きが止まる
- 低くうなる
- 鼻をなめる仕草やあくびを繰り返す
どんな子でも、知らない人に囲まれたり、急な動きや大きな音に驚いたりすると、落ち着きを保てなくなることがあるものです。「いつもと少し違うかも」と感じたら、愛犬に無理をさせないこと。距離を取ったり環境を変えたりすることが、トラブルを防ぐことにつながります。
日々の心がけが安心をつくる
思わぬ噛みつきは、日々の小さな積み重ねの中で防げることが少なくありません。たとえば、以下のような何気ない心がけが、愛犬にとっても周囲にとっても安心できる材料となります。
- 外出時のリードは短めに持ち、ワンちゃんから目を離さない。
- 触らせる前には愛犬にひと言声をかけ、相手の様子も確認する。
- ドッグランでは、興奮が高まりすぎていないかを見守る。
その他、「おすわり」「まて」「おいで」といった基本のコマンドは、従わせるためではなく、落ち着きを取り戻すための合図としても役立ちます。
また、飼い主自身が落ち着いていることも大切です。一緒にいる人の不安や緊張は、思っている以上にワンちゃんに伝わるもの。穏やかな声かけやゆったりとした態度が、愛犬の安心感につながります。
大切なのは、「うちの子は大丈夫だろう」と決めつけないこと。その日の体調や環境をふまえ、状況に応じて判断することが、事故やトラブルを遠ざける第一歩になります。
愛犬のトラブルを避けるために
万が一、愛犬が人を傷つけてしまった場合、飼い主には法的な責任が生じる可能性があります。治療費や損害賠償の問題だけでなく、自治体から管理の強化を求められることも。
また、ワンちゃん同士のトラブルでも、相手にけがをさせてしまえば飼い主の責任が問われます。ドッグランでの過度な興奮や相性の見極め不足が要因となることも少なくありません。治療費の負担に加え、施設の利用を制限されるなど、その後の生活に変化が生じる可能性があります。その結果、愛犬の行動範囲が狭まったり、これまで通りの環境で過ごせなくなったりすることもあるのです。
そして何より、愛犬が「危ない犬」と見なされてしまうことがあります。「あの犬は近づかないほうがいい」と周囲から距離を置かれるようになるのは、飼い主にとってもつらいものです。だからこそ、「噛ませない」という意識は、周囲の人たちと良好な関係を保つことにつながり、愛犬のこれからの暮らしを守ることにもつながります。
まとめ
トラブルを避けたいからといって、厳しくしすぎたり外出を控えすぎたりすると、ワンちゃんにとってはかえってストレスになることもあります。意識したいのは、「ふれあいを避ける」ことではなく、飼い主が責任をもって見守り、安心して過ごせる環境をつくること。
そんな心がけが、周囲の人や他の犬と穏やかにふれあえる時間を増やしていきます。ワンちゃんと心地よく暮らせる日々を、これからも大切にしていきたいですね。


