愛犬を飼うみなさまにとってはとてもうれしいことですが、近年、獣医療の発達や食事の変化、適切な飼育管理などによって犬の寿命が延びています。一方で犬の高齢化が進み、お悩みや問題も生まれてきました。若い時と比べ元気がなくなって動きもゆっくりになったり、体調不良を起こしやすくなることもあります。具体的にはトイレの失敗、夜泣き、徘徊などなど年齢重ねることで生まれてくる問題があります。
今回はそんな高齢犬たちとの接し方として、トイレのトレーニングとお散歩以外のリフレッシュ方法についてご紹介します。
高齢になると、それまでできていたトイレがうまくできなくなることがあります。
お散歩で外に出るまで我慢できていたのに家の中で粗相をしてしまったり、今まではトイレシートの上で排泄していたのに色々な場所で失敗をしてしまうことがあります。
飼い主さんがやさしく教えてあげ、正しく接することで今のうちから予防できたり、改善することもできますのでぜひ覚えてください。
トイレの失敗に対して飼い主さんは、怒鳴りつけたり叱ることは絶対にやってはいけない、ということはまず頭にいれておくことも重要です。
トイレの失敗が急に増えてきたら、まずは動物病院に連れていきましょう。歳をとり泌尿器系の病気になってしまっている可能性があります。また、犬の高齢化とともに増加し
ている認知症が原因の場合もありますので、粗相が増えてしまったワンちゃんは、まずは獣医さんに診てもらうことが大切です。
<外で排泄する習慣があるワンちゃん>
今まで外でのみトイレをしていたワンちゃんは、室内でできるようにトレーニングしてみましょう。雨や雪の日も、排泄のために散歩に行かなければならないとしたら大変ですし、ワンちゃんも雨に打たれて体調を崩してしまっても困ります。
また、排泄の度に外に出すことがワンちゃんにとって負担になってしまうこともありますし、それが飼い主さんの負担になるケースも多いので、室内での排泄を練習しましょう。
①ベランダなど半屋外を作ってまずはトレーニングを始めましょう。トイレシートを敷き、その上に土や木の枝などをのせて、できるだけお散歩道(外)と似ている環境を用意します。もし、お散歩中足を高く上げてオシッコをするワンちゃんはペットボトルにシートを巻き付けて電信柱のようなものを作ってあげてもよいでしょう。
②お散歩に行く前(普段オシッコをする時間)に、ベランダのトイレスペースに連れていき、排泄を促しましょう。
排泄することができたらたくさん褒めてごほうびをあげてくだ
さい。そして、排泄ができたらお散歩に行くようにしてあげましょう。
また、排泄をしているときは、「ワンツーワンツー・・・」や「トイレトイレ・・・」、「シーシー・・・」などの声をかけてあげ、排泄の合図を教えましょう。
最初は排泄するまで時間がかかるワンちゃんが多いですが、このトレーニング中は、設定したトイレで排泄するまではお散歩には行かないで我慢させることも練習のポイントになります。しかし、排泄を我慢させすぎることで体調を崩さないように十分に気をつけてください。すでに泌尿器系の病気を持っているワンちゃんは、絶対に無理をさせないようにしてください。もしトレーニングがうまく進まない場合は、オシッコ吸い取ったシートを置いてあげると、匂いの刺激によってスムーズにしてくれることがありますので、準備してみましょう。
③排泄ができるようになったワンちゃんは、ベランダから徐々に部屋の中に移動してみましょう。はじめはベランダの近く(窓際など)に設置して、遠くに移動はしないでください。急に遠くに移動してしまうと混乱してしまう場合があります。
また、土や木の枝、草などを減らしていき、トイレシートのみの状態に近づけてみましょう。ただし、オスの場合は足をあげてオシッコする子がいるので、「ペットボトルにシートを巻いたもの」を残してあげたり、「L
字型のトイレ」を準備してあげても良いでしょう。
※注意点
このトレーニングはワンちゃんによってはとても時間がかかります。今まで外でしか排泄したことがないワンちゃんが、急に室内で排泄するようになることはほとんどありません。ワンちゃんによっては排泄をかなりの時間我慢してしまう子もいますので、体調を見つつ時間をかけて練習してください。また、できるだけ早めにこのトレーニングをはじめることをお勧めします。
<室内での排泄する習慣があるワンちゃん>
もともと室内で排泄ができていたワンちゃんも、高齢になるとトイレ以外の場所でオシッコやウンチをしてしまうことがあります。
老化や病気が原因で我慢ができなかったり、足腰が弱ってトイレの場所まで間に合わなくなったりすることがあるからです。
排泄の失敗が続けば、飼い主さんも処理が大変ですし、いたるところですることが習慣になってしまうこともありますので、失敗をしないように部屋の環境を整えてあげることが大切です。
①移動しやすいように、床には滑り止めを敷く
②トイレの場所を寝床(休む場所)の近くに移動する
③トイレを数ヵ所用意する
④移動できる範囲を制限して、トイレに行きやすいようにする
室内でのトイレトレーニングの教え方は「第 15 回 子犬の時からトイレのしつけをしよう!」をご参照ください。
もしトイレの失敗が多く、①~④の対処をしても難しい場合は、犬用おむつの着用を練習するとよいでしょう。
歳をとって高齢になると、体の衰えが進みワンちゃん自信、自由がきかなくなってきます。筋力だけではなく目や耳も衰え、周りに対しての興味や関心が薄れて、1日の大半を眠って過ごしたり、動いてもよたよたとおぼつかない足取りで歩くようになります。
外に出ることを嫌がるワンちゃんも多く、運動やリラックスがうまくできなくなってしまうことがあります。新しい場所に連れて行ったり、神経質にかまってしまってもワンちゃんは疲れてしまいますので、家の中でも楽しめるような遊びをしてあげるとよいでしょう。
おもちゃを動かしておいしいごはんを手に入れられる遊びは、ワンちゃん自身はあまり動かずに楽しむことができます。
激しく走り回らなくても、おもちゃ遊びはできますのでぜひ取り入れてみましょう。
家の中をずっと動き回って徘徊するワンちゃんもいます。もし、ひたすらに歩き回るようなワンちゃんは、エンドレスサークルのようなものを使ってあげると、壁にぶつかるな
どのトラブルを防ぐことができます。
高齢になって外に出たがらないワンちゃんは無理をしないことが大切ですが、体調がよくてワンちゃんが外に出たがるようならお散歩に連れて行ってあげましょう。スローペースでゆったりと歩きますが、ワンちゃんは周辺のにおい嗅ぎや風を感じたりして楽しみます。
無理は禁物ですが、飼い主さんは付き合ってあげることが大切です。
基本的には、毎日の健康チェックや食餌、排泄の世話をしっかりすることがワンちゃんへの安心につながり重要なポイントになります。