原因
フィラリア症は“犬糸状虫(犬フィラリア)”という寄生虫が動物の肺や心臓に寄生することで発症する病気です。心臓の中の成虫から生まれたフィラリア幼虫(ミクロフィラリア)は動物の血液中に存在していますが、蚊がその動物の血を吸ったときに蚊の体内に入り、次の動物を刺したときに唾液と共に体内に侵入して感染します。
幼虫は数か月かけて皮下組織から血管内に移動し、血流にのって肺や心臓に達し体長15~30センチほどの成虫となります。ただ猫の場合、成虫になるのはごく一部で、1頭に1~3匹程度と言われており、ほとんどは途中の組織で死んでしまいます。また成虫になってからの寿命も犬の場合は5~6年なのに対して、猫の体内では2~3年です。
症状
犬の場合、フィラリアの成虫が心臓内に存在すると循環器障害を引き起こして、心不全や腹水などの特徴的な症状がみられますが、猫の場合はっきりとした症状が現れないことが多く、突然死することではじめて疑われる、ということが多くあります。
猫のフィラリア症の症状としては主に肺に見られ、幼虫の段階で肺の血管内で詰まって死亡することによってアレルギー反応をおこし、咳や呼吸困難など気管支炎に似た症状や、食欲不振、体重減少、嘔吐などが見られますが、普段の生活ではわからないこともあります。
診断
犬の場合、フィラリア症の検査は“ミクロフィラリア検査”といって血液中の幼虫の存在を顕微鏡で確認したり、”抗原検査”というフィラリア本体の存在を調べる血液検査をするのが一般的です。
しかし、猫では成虫数が少ないためこれらだけでは診断できないこともあります。症状も一般的な肺炎などと似ているため、診断を行うには抗原検査に抗体検査(フィラリアに対する免疫物質(抗体)の有無を調べる検査)を組み合わせて、さらにレントゲンやエコー検査などの結果なども考慮して総合的に判断することになります。
治療・予防
フィラリアが一度体内に入ってしまったら、それを取り除くことは非常に困難です。心臓内の成虫を取り除く手術法もありますが、危険を伴うためあまり行われることはありません。
フィラリアの寿命は2~3年なので、寿命が尽きて死滅するまで、新たな寄生を防ぎながら症状を和らげる処置を行うことが治療になりますが、肺の症状は長く残りますし、フィラリアの死骸が血管に詰まってショック死することもあり、完治させる方法は確立されていません。
ですので、フィラリア症は治療ではなく予防することのほうが大切です。フィラリア予防薬というのはフィラリアの幼虫を殺す薬で、蚊に刺されたときに侵入した幼虫を、血管内に移動する前に駆除することが可能です。
猫専用のフィラリア予防薬には、飲み薬(錠剤)と皮膚に付ける薬(スポットオン)の2種類がありますが、“蚊が出始めてから、出なくなって1か月経過するまで”きちんと継続して使わなければ効果がありません。どの薬をいつまで使うかは処方する獣医師とよく相談しましょう。
まとめ
フィラリア症は蚊がいる地域ではとてもリスクが高い病気です。猫の場合、フィラリア感染率はその地域に住む犬のフィラリア感染率の10~20%と言われており、約10頭に1頭がフィラリアの抗体が陽性だったという報告もあります。
さらに感染した猫の約4割は室内飼育だったという報告もあり、おうちの中だけで飼っているからといっても安心はできません。猫ちゃんもしっかりフィラリアの予防をするように心がけましょう。