犬と暮らしていくうちにふと「もう一頭迎え入れようかな・・」と思ったり、犬好きな方は犬まみれの生活に憧れることもあるでしょう。実際に複数頭を飼育している飼い主の方の調査では、「一人きりだとかわいそう」、「複数頭の方が犬同士で遊べて運動不足解消になると思った」、「留守番の時、複数頭の方が気がまぎれる」などの飼育理由が挙げられています(一般社団法人ペットフード協会調べ、2015年10月)。飼い主さんたちの心境を考えると当然のことだと思いますが、複数頭の飼育にはメリットだけではなくデメリットもあります。今回は、多頭飼育をする際に、気をつけなければならないポイントをお話したいと思います。現在複数頭と暮らしている方、これから考えている飼い主の方のヒントになれば幸いです。
※30s未満は参考値 | 1頭だとペットが寂しがると思ったから | ペット同士で遊ぶので、運動不足解消ができるから | ペットだけで留守番時に相手がいるので寂しくないから | 1頭のときよりもペットに癒されるから | いつでもペットといたいから | 亡くなったときでも、他のペットに慰められるから | ペットロスを防ぐため | 犬/猫の子供をもうけられるから | 先に飼育していたペットがしつけをしてくれるから | あてはまるものはない |
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TOTAL(n=344) | 41.3 | 36.6 | 35.5 | 17.2 | 13.7 | 8.4 | 7.8 | 6.1 | 6.1 | 26.2 |
犬複数頭飼育者(n=157) | 49.7 | 36.3 | 40.1 | 19.1 | 17.2 | 11.5 | 10.2 | 9.6 | 8.9 | 19.1 |
猫複数頭飼育者(n=202) | 35.6 | 37.1 | 33.2 | 16.3 | 12.4 | 6.9 | 8.4 | 4.5 | 5.4 | 29.7 |
犬&猫複数頭飼育者(n=15) | 53.3 | 40.0 | 53.3 | 26.7 | 33.3 | 20.0 | 40.0 | 20.0 | 26.7 | 0.0 |
複数頭飼育する場合には、犬同士の相性(年齢、体格、性格、性別)や飼育環境、経済的負担など色々と配慮しなくてはいけないことが数多くあります。犬がもう1頭増えるということは、飼育スペース、飼育にかかる費用、世話をする時間などが倍になります。犬たちを迎え入れる余裕があるのか、自分のライフスタイルと照らし合わせて今一度振り返ってみましょう。準備をおこたることで人にも犬たちにも負担が増えてしまっては元も子もありません。少しでも問題があるのであれば、無理をして多頭飼育をする必要はないと思います。先住犬の幸せや、迎え入れる犬の幸せを考えるのであれば、多頭飼育を諦めることも大切な選択肢の一つだと思います。
色々とお話をしていく中で多頭飼育のリスクは高いと感じる方もいると思いますが、しっかりとこれらのポイントを考慮した飼育環境が整えることが出来るのであれば多頭飼育のメリットも沢山あります。もともと群れで生活をしていた動物でもあるので、犬同士のコミュニケーションなど今までは見られなかった仕草や犬の魅力に気づくことも出来るでしょう。留守番の時なども複数頭居ることで落ち着いていられるようになることもあります。
しかし、一番重要なことは、飼い主がしっかりと責任をもって犬のことを考えてあげることが重要だと思います。多頭飼育でも単頭飼育でもそれは同じことで、犬の動物としての特性をしっかり理解し、家族に迎え入れる犬たちと一緒に楽しく生活するためには何が必要なのか今一度考えることが大切です。
私も犬を飼っていますが、愛犬とお互い楽しく生活するためにはどうしたら良いのか考えながら日々暮らしています。最近では、人に危害を加えてしまった犬のニュースも取り上げられますが、犬は動物なので人社会のルールを自分で考えることは難しいことです。飼い主のサポートが必要で、犬たちをサポートするためには犬をしっかりと理解することが重要です。
犬たちとの楽しい生活のために “犬のしつけ” とは何なのか?ということを考えるきっかけになれれば幸いです。
下記にも一部トレーニングの活用方法をご紹介しますのでご参考ください。
先住犬にしても新しく迎え入れる犬にしても、それぞれが安心できるスペースを作れる環境が提供できるかどうか一度ご検討ください。先住犬からすれば自分の安心できる部屋に知らない犬が侵入してくると考えるでしょう。新しく迎え入れる犬にしてみれば、新しい環境に馴れていないのに知らない人や犬がいては平常心を保つことはできません。安心してご飯が食べられる、休息することが出来る場所がなくては心身ともに健全な状態を保つことは難しくなります。そんなときに活用していただきたい項目に「ハウストレーニング」があります。
実際に複数頭と一緒に生活をしている飼い主の方にお話を聞くと、ご飯の時に先に食べ終わった方が、食べ終わっていない方のフードを横取りしたり、フードの取り合いになってケンカしてしまったなどお聞きします。「ハウストレーニング」を覚えていることで、健康管理や犬同士の関係性を悪化させることなく、個々でゆっくり食事ができる環境作りが可能となります。
過去の記事でもトレーニング方法は紹介しているので下記をご参照ください。
第1回 ここぞ!! で使えるハウスのトレーニング
第58回 上手なお留守番ができるようになろう
第65回 子犬の接し方①~ハウスのトレーニング~
上記の過去記事「ハウストレーニング」の内容にもありますが、ハウスやケージの中に入ることに対して抵抗なくすんなり入ることが出来るのであれば、そのトレーニングにプラスして、朝ごはんや夕ご飯をハウスやサークルの中で食べる習慣をつけてみましょう。方法は簡単で、犬たちの食器にご飯の準備ができたらハウスやサークルに移動して食器を置くだけ。ハウスの言葉を理解しているのであれば、準備している時や移動している最中に「ハウス」の掛け声をかけても良いと思います。我が家の愛犬は、私がご飯の準備を始めると(食器にドライフードを入れるときのカラカラ音が鳴ると)一目散にケージの中へ走り、今か今かと待っています。
ハウスを安心できるスペースとして認識している犬が、ハウスの中でご飯を食べる習慣がつくと、犬は次第に、飼い主さんがご飯の準備をするとハウスに持ってきてくれることを予測できるようになります(餌の準備を始める=ハウスの中に食器を置く)。このように、少し工夫してハウストレーニングを応用することで、個々の犬が自発的に自分のハウスで待つようになるので、健康管理や余計なケンカなど回避することが出来るため犬にも人にも安心で簡単な管理が可能になります。
犬の運動不足やストレス発散には、狩猟欲求を満たしてあげることが重要です。犬は欲求を満たしてくれる人が大好きです。犬との遊びでオモチャを使うことにより、追いかけたり、噛みついたりなど狩猟欲求を効率よく発散させることも出来るので、犬との関係性も深められるため遊びは重要です。
前述した調査結果にもありましたが、複数頭で飼育すると犬同士で遊ぶから運動不足を解消できるのではないかと考えることもあると思います。犬同士の相性がよほど合えば、最初から上手に犬同士で遊ぶかもしれませんが可能性としては低いと思います。犬は自分の財産を守りたくなる習性をもっています。それぞれの犬の性格や、犬の習性を考えるとオモチャの取り合いになったりケンカのリスクの方が高まるのではないでしょうか。
犬同士の関係性も重要ですが、まずは、先住犬に対して、新しく迎える犬に対してもそれぞれに飼い主さんと1対1で関係を深める時間が必要だと思います。先住犬からすれば飼い主さんと遊ぶことを邪魔されて良い気分になる犬はいないと思いますし、迎え入れた犬は馴れていない環境では不安もあると思います。リラックスした状態で飼い主さんと1対1で向かい合える環境作りを心掛けてあげましょう。
例えば、お散歩に行くときに時間はかかりますが1頭ずつ行く日を作ってあげることで、じっくりコミュニケーションを取ることが出来ると思います。2頭同時にお散歩に行った時でも、1頭と遊んでいるときには、リードを繋げられるところで大好きなオヤツを詰めたオモチャを与えて気を紛らわせてあげることも出来ると思います。また、雨などでお散歩できない時など、室内で遊ぶときは、上記の「ハウストレーニング」を上手に活用してみましょう。ハウスやサークルの中に大好きなオヤツが詰まったオモチャを数個入れてあげて、夢中になっている間にもう1頭とトレーニングしたり遊んだりしてみてはいかがでしょうか。
頑丈な場所にリードを繋げてもう一方の犬と遊んだり、ハウスに入れて我慢させて待たせることも出来ますが、オヤツが詰められるオモチャやハウストレーニングを上手に活用して、徐々にステップアップできるような方法を考えてあげることで無理なくかつ効率よくルールを教えることも可能だと思います。今回はハウストレーニングの活用方法をご紹介しましたが、犬の習性などを人が十分に理解しトレーニングを通して犬に伝えることが出来れば、工夫次第でより良い犬との生活環境が作れると思います。皆さんも愛犬と相談しながらチャレンジしてみてください!
犬との遊び方に関しては、下記の記事をご参照ください。
第16回 魅力的な遊びを実践!①~おもちゃの管理を心がけよう!~
第17回 魅力的な遊びを実践!②~ワンちゃんとの楽しい遊び方~