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ペットとの生活

ドックトレーナー直伝! しつけのコツ

愛犬と一緒に健康的なダイエット!?

第75回 愛犬と一緒に健康的なダイエット!?
2017/06
第75回 講師 岡本 雄太先生
岡本 雄太
岡本 雄太(おかもと ゆうた)
犬のしつけ方教室スタディ・ドッグ・スクール®宇都宮校
栃木県宇都宮市西原町3298-18
■ドッグトレーナー
麻布大学 動物人間関係学分野で博士号取得
JAPDT:NPO法人日本ペットドッグトレーナーズ協会理事
麻布大学:介在動物学研究室共同研究員

梅雨の時期に入り、愛犬とのお散歩も天気が気になる季節になってきました。お散歩好きなワンちゃんにとっては日々の生活に欠かせない大切なものですが、時としてお散歩が億劫になってしまう飼い主さんも居るのではないでしょうか。そんな皆様に知っていただきたいことがあるのですが、犬とのお散歩には人の健康に良い影響を与えてくれるという研究報告がされています。今回は、毎日のお散歩を通して、ワンちゃんにとっても飼い主さんにとっても充実したお散歩にするためのポイントをご紹介いたします。

犬とのお散歩で得られる効果!?
ある研究チーム(米マイアミ大学、ミズーリ大学、イリノイ大学)が2016年に発表した調査によると、犬を飼っていて、一緒に散歩している高齢者は、身体的に健康な人が多い傾向がある事を報告しています。この研究の対象者の健康状態、運動量、病院の受診頻度などを、犬を飼っている人と飼っていない人で比較すると、犬を飼っていて散歩に行く人は、米国で推奨されている運動量(週150分以上の運動)を達成し、BMI も基準値以下で、体の不調を感じて病院へ受診する回数も減っている結果が出ました。
参考文献:Dog Walking, the Human–Animal Bond and Older Adults Physical Health.

この他にも、早稲田大学スポーツ科学学術院の岡教授の調査では、犬を飼っている人は、平均1.4回/日、42.8分を散歩に費やしていて、1週間にすると平均4.8回/日、214分も散歩している計算になります。厚生労働省が発表している「健康づくりのための身体活動基準2013」では、18~64歳の推奨身体活動量は、3METs以上の強度の身体活動を毎日60分、週に23METs以上を推奨しています。METsとは運動強度の単位で、犬の散歩は3METs(中強度の運動)に相当します。つまり、犬の 散歩を毎日40分程度することで、推奨量の大半を賄える計算になりますが、単に犬の散歩をすれば上記の効果を得ることが出来るわけではなく、ただダラダラと犬のペースで歩いたり、休憩をこまめに取ったお散歩ではなく、一定の速度で正しいウォーキングの姿勢で犬と散歩をしないと良い運動効果を得ることが出来ないようです。

point
人がウォーキングで消費できるカロリーは、生活環境など人それぞれで違いますが、体重60kg の人が普通歩きもしくは早歩きで40分歩くと、大体150~180kcal を消費できるといわれています。お茶碗一杯の白飯(150g)で220kal で、コンビニおにぎり(梅)で大体170kcal です。ワンちゃんのお散歩で早歩きするとおにぎり1個のカロリーは消費できる計算です。しかし、人の歩くペースにワンちゃんが併せてくれる かと言ったらそうではありません。ワンちゃんだって風の匂いや地面の匂い、動くものなども気になるし、色々な刺激に反応したくなります。近所の仲良しの犬友達やオヤツをくれる近所の犬好きの人がいれば挨拶に行きたいので引っ張ります。人の健康のため、ワンちゃんの欲求を上手に満たすためにはどのようなお散歩を目指せばよいのでしょうか。

ワンちゃんとスムーズに歩くためのトレーニング①

ワンちゃんにとって外は色々な誘惑刺激に溢れています。他の犬、人、車、自転車、鳥など動くものや地面の匂いに関しては嗅がずにはいられません。特に雄は自分のお気に入りのお散歩コースのテリトリーに他の犬が侵入した形跡があると自分の匂いを上書きしようとマーキングしたい欲求がこみ上げてきます。当然、他の犬たちも自分の散歩コースにマーキングしていきますので、自分以外の匂いが点在しているため、あっちへフラフラこっちへフラフラ匂いを見つけては移動します。飼い主さんたちもフラフラ歩かれると危ないので、リードを引っ張ってきちんと歩かせようとするのですが、実は、この引っ張る行為が犬たちの引っ張って歩く行動を助長させてしまいます。
犬たちは行きたい方向に行けないので、リードの引っ張りに対してもっと強く引っ張って目的の場所を目指します。飼い主さんは犬たちの首が締まってしまうので仕方なく後に続いてしまうといった悪循環が生まれています。お散歩で上手に歩くためには、これらの誘惑を我慢させる必要があるのですが、匂いをかがせない、排泄させない、引っ張らないで歩かせるとなると犬たちにとってお散歩はとても苦痛なものとなってしまいます。この状況を回避するために教えておきたいトレーニングをご紹介。

①名前を呼んで飼い主さんに意識を向ける練習
まずは、名前を呼んだら飼い主さんの方に意識を向けられるようにトレーニングします。お部屋の中など、誘惑刺激があまりない環境では簡単に出来ると思いますが、外の誘惑がある環境でも同じように練習します。

名前を呼ぶ ⇒ 飼い主さんを見る ⇒ オヤツをあげる

ワンちゃんにとって嬉しいご褒美をあげましょう。玩具で遊んであげても良いと思います。どうしても声で呼んだだけでは振り向いてくれない時には下の様に、お尻をツンツン突っついてみたり、手をたたいて音を出す、口笛を吹くなどワンちゃんが気になる刺激を与えます。

②誘惑物を諦める練習
①のトレーニングに併せて教えておきたいトレーニングとして、誘惑物を諦めたときに褒める練習をしておくと、外の誘惑が多い環境でも、飼い主さんへ意識を向けることが簡単に出来るようになりますので下記をご参照ください。

第 24 回 誘惑に打ち勝つコマンド「Leave it(リーブイット)のコマンドを教えてみよう!

ワンちゃんとスムーズに歩くためのトレーニング②

誘惑刺激に意識が向いても、飼い主さんの掛け声に対して反応し、ワンちゃんの意識が自分に向けられるようになってきたら、お散歩の中でもどんどん実践してきましょう。どうしても興奮して飼い主さんに意識を向けられないようなときは、一度、その場に止まってリードを短く持ってみたり、引っ張り防止用のハーネスや道具を使用して犬の動きを抑制してみましょう。犬は興奮し始めると、自分で興奮を抑えるのが苦手な動物です。動きをとめてあげることで落ち着くきっかけを与えることも出来るようになるので、苦手な刺激や興奮する刺激が近付いてくるときにはその場に止まって意識を向ける練習をします。

誘惑刺激に対して過剰に興奮させないように犬の動きをコントロールすることが重要です。ここまでコントロール出来たら、後は飼い主さんの横で歩くトレーニングを並行して練習してみましょう。

歩行トレーニングは下記をご参照ください。
第 55 回 人もワンちゃんも楽しく!理想的なお散歩を目指しましょう
第 56 回 お散歩をもっと楽しく!歩行トレーニングの応用編

愛犬と一緒に健康的なダイエット プログラム!?

Step1・2を通して、外の環境でも人のペースで歩くトレーニングが出来てきたら、徐々に匂い嗅ぎやトイレをさせるポイントを減らしていきましょう。トレーニングの最初の内は失敗することがあると思います。排泄物を処理できる道具は忘れずに持っていきましょう。散歩の前に自宅(庭先や部屋の中)で排泄をさせる習慣をつけることで、不必要な排泄を予防することも可能です。下の記事も参考にしてください。

第 61 回 お散歩のマナーを守ろう

理想的なのは、他の人にも迷惑をかけないような、犬と一緒に遊ぶことのできる公園などが散歩コースにあるとベスト。公園までの道中では横について歩いている時や信号で止まった時などにはオヤツをあげたりしながら公園を目指します。公園に到着したら思う存分狩猟欲求を満たす遊びをしてあげましょう。引っ張りっこ、ボール投げ、追いかけっこなどなど愛犬の好きなことを一緒に楽しみましょう。十分なスペースが無くても、引っ張りっこなど工夫次第で犬たちの狩猟欲求を満たすことは可能です。下記の記事も参考にしてください。

十分リフレッシュできれば、自宅までの帰り道では、誘惑刺激に対する反応も散歩前よりは弱くなっていると思いますので、ちょっと遠回りしながら自宅へ帰っても良いと思います。飼い主さんの健康ウォーキングに少し付き合ってもらいましょう。自宅と公園の往復で飼い主さんのウォーキングするペースに合わせて歩き、前述した推奨運動量の歩行時間(40分)を賄うことも出来ると思います。このように愛犬とのお散歩コース・トレーニングを工夫することで、飼い主さんが十分ウォーキング出来る時間、ワンちゃんと一緒に十分遊べる時間を取ることは可能で双方にとって充実したお散歩をすることが出来ます。皆さんも愛犬とのお散歩計画を考えてみてはいかがでしょうか。

第 17 回 魅力的な遊びを実践!②~ワンちゃんとの楽しい遊び方~

最近の研究では、人間にとって犬たちと生活を送ることで色々な良い効果があることが報告されています。しかし、ただ単に犬を飼育するだけではその効果を得ることは難しいこともわかってきています。飼い主さんも愛犬たちも双方にとってより良い生活を送るために、犬を知ることで適切なコミュニケーションを学び、日常生活の質を向上させていただければ幸いです。