犬と猫の祖先
犬と猫の祖先は実は同じで、6500万年~4500万年前に生息していたとされる“ミアキス”という古生物です。恐竜が絶滅した後に繁栄した哺乳類の一つで、ラテン語で“動物の母”という意味を持ち、クマやアシカなど他すべての食肉目の祖先であると考えられています。
ミアキスは体長約30センチで胴長短足、イタチに似た体形をしていて、森の木の上で生活しており、鳥の卵や小動物などを食べていたようです。5本指で猫と同じく出し入れすることのできるカギ爪を持ち、肉を切り裂くことが出来る裂肉歯が発達していました。
犬の進化
一部のミアキスは森から草原に出て暮らすようになり、4130万年前~3780万年前のヘスペロキオン、約2,400万年前 – 2,000万年前のキノデスムス、1500万年前のトマークタスなどに進化したと言われています。木に登る必要がなくなったのでカギ爪は引っ込めることが出来ない爪になり、体形も今のハイエナのような姿になりました。
トマークタスからはやがてキツネやタヌキ、オオカミなどのイヌ科が現れ、北アメリカからベーリング海峡を渡り、ユーラシア、アフリカへ広がっていきました。オオカミはさらに隠れる場所が少ない草原で大きな草食動物を餌とするために早く走る脚力を身につけ、集団で狩りをするようになり、吠えて仲間同士でコミュニケーションをとるように進化したと考えられます。
人と暮らす犬
犬の祖先はオオカミであることはDNAからも間違いないようです。アジアのオオカミが最も近縁種と言われていますが、その後ジャッカルやコヨーテ、他のオオカミなどとも交雑を繰り返して今の多様な犬が生まれていったとされています。
オオカミが犬になったのは約4~2万年前とされ、犬が人と共に生活するようになったのも同時期とされていますが、はっきりとしたことはまだわかっていません。推測では、40~15万年前の旧石器時代から狩りをする人の周囲にオオカミが近づくようになり、その後人と共に生活することが出来るようになる犬が現れるようになり、互いに協力し合うようになったのではないかと考えられます。
猫の進化
森に残ったミアキスは俊敏さを身につけ、聴覚や平衡感覚を発達させて単独で暮らします。2500万年前に存在したプロアイルルスはミアキスの進化系と言われています。
プセウダエルルスは800~2000万年前にヨーロッパ、アジア、北アメリカに生息していた、現存するネコ科動物の祖先であり、ここからヒョウ系(大型ネコ科)、ボルネオヤマネコ系、カラカル系、オセロット系、リンクス系、ピューマ系、ベンガルヤマネコ系、ネコ系、と順に分かれていきました。今のイエネコを含むネコ系は約340万年前ころに祖先種から分岐したと考えられます。
人と暮らす猫
2007年のミトコンドリアDNAによる調査の結果、野生のネコでペットのネコと遺伝子的に一番近いのは約13万年前に他のヤマネコから枝分かれした中近東に住むリビアヤマネコということが明らかになりました。
今から約1万年前にトルコ半島基部のメソポタミア文明発祥の地で人と共に暮らすようになったと思われます。ここは2つの川に挟まれた穀倉地帯で、作物を狙ってネズミが集まり、そのネズミを食べるために猫も人の近くで暮らすようになりました。
人はネズミを退治してくれる猫を大切に扱うようになり、特にヤマネコの中でも性格が穏やかなリビアヤマネコが飼われるようになって、今のイエネコになったと考えられます。約4000年前のエジプトでは猫は神聖視され、死んだあとはミイラとして葬られるほど愛されるようになりました。
まとめ
犬や猫の祖先が何だったかを知ることによって私たちは自分のペットの本質を知ることが出来ます。たとえば、猫があまり水を飲まないのはもともとリビアの砂漠出身だから、とか犬が家族の序列を大切にするのは群れで暮らすオオカミが祖先だから、と考えると腑に落ちますよね。