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ペットとの生活

ペット版 家庭の医学

第15回 シニア犬のケア

第15回 シニア犬のケア

ペットは私たちよりも早く歳をとっていきます。見た目は変わらないようでも大型犬では6~7歳、小型犬でも8~9歳くらいから“シニア”と呼ばれる年齢になり、若いころとは異なるケアが必要になってきます。シニア犬になっていく変化、またそのときに気をつけなければいけないことについて今回はお話をしていきましょう。

シニア犬で気を付けること:動きの変化

シニアになるとお散歩や遊びの行動が若いころと違ってきます。若いときはどこまでも元気に歩いて、人のほうが先に疲れてしまうまで遊んでいたのに、歳をとるとだんだん関節の動きが悪くなって筋肉も痩せてくるので、お散歩もすぐに帰りたがったり、座ったままで動かなくなる時間が増えてくるかもしれません。運動はワンちゃんのペースに合わせて無理はさせないようにし、もしも歩くときに痛がったり、呼吸が荒くなるようなら関節や心臓の病気も疑われるので、一度動物病院に相談してみましょう。

シニア犬で気を付けること:感じ方の変化

ワンちゃんも歳をとると目や耳が悪くなります。例えば老齢性の白内障になると薄暗いところでは足元が見えにくくなって段差を怖がるようになったり、耳が遠くなると呼びかけても判らず触られて初めて気が付いてびっくりする、というようなことがあります。また、ペットにも“認知症”が存在し、反応が鈍くなったり、昼間はずっと寝ているのに夜は意味もなくぐるぐると歩き回ったり夜鳴きをするようになったり、というような行動が見られることがあります。こういった感覚器や脳の老化はなかなか治せるものではありませんが、初期のうちから対応していくことによって進行を遅らせることができる場合もあるので、日頃からよく観察して、ちょっとした変化に気づいてあげることが大切になります。

シニア犬で気を付けること:体表の変化

「うちの子、歳をとってきたな」と一番実感できるのは、やはり外見からだと思います。シニアになるにつれて、どうしても毛づやが悪くなり、白髪になったり被毛の量も少なくなってきます。また、皮膚も乾燥してカサカサしたり、黒ずんできたり(色素沈着)、といった変化もみられます。こうしたことはある程度は仕方のないことですが、体表の変化で一番気をつけなくてはいけないのが腫瘍(がん)です。皮膚がんや乳腺腫といった病気はシニアになると発症しやすく、また早く見つければ治すことが出来るケースも多いので、日頃からグルーミングやスキンシップのついでにペットの体をよく触って“できもの”がないかチェックするようにしましょう。

シニア犬で気を付けること:食べ方の変化

人も若者とお年寄りでは食べる速度が異なるように、ペットもシニアになれば若いころよりも食べ方がゆっくりになります。これは自然なことです。消化機能も低下してくるので、消化の良い栄養バランスのとれた食事を小分けにして与えるようにしましょう。
しかし、もしも固いものだけを食べなくなったり、食べながらボロボロと口からフードをこぼすようになったら、シニア犬によく見られる「歯石の沈着による歯周病」になっているかもしれません。ワンちゃんは虫歯にはなりにくいのですが、歯肉炎や歯槽膿漏などの歯周病にはなりやすく、そのままにしていると口臭がひどくなったり、歯が抜けてしまったりすることもあります。若いころから歯磨きなどでデンタルケアをしてこなかったワンちゃんは特に、シニアになったら定期的に口の中をチェックしてもらったほうがよいでしょう。

まとめ

自分たちよりも早く歳をとっていくペットを見ているのは少し辛いことかもしれませんが、毎日のちょっとしたケアでペットの老化をゆっくりにしていくことは可能です。毎日のお世話の中で小さな変化も見逃さず、そのときのペットに一番大切なことは何かを考えながら、シニアペットとの生活を長く楽しんで下さいね。