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ペットとの生活

ペット版 家庭の医学

第20回 腎臓病について

第20回 腎臓病について

腎臓の病気は高齢ペットでよく見られ、特に高齢猫のほとんどが慢性腎不全のリスクがあると言われています。ペットの腎臓病は、臨床症状が現れて飼い主が気付くころにはかなり進行してしまっていることが多く、今のところ有効な治療法は見つかっていません。

腎臓の構造と働き

【位置と構造】
犬や猫の腎臓は腰の背中側に背骨を挟んで2個、右側のほうがやや頭側で斜めに並んでいます。それぞれの形は豆状で、中央部から動脈、静脈、尿管が出ています。
腎臓の中には糸くず状に丸まった毛細血管の構造(糸球体)が多数あり、一つ一つはボーマン嚢と呼ばれる袋に包まれており、この構造を“ネフロン”と言います。ネフロンは犬で約80万個、猫で40万個ほどあり、ここの毛細血管から染み出た老廃物と水分はボーマン嚢から尿細管を通って尿管、膀胱へ運ばれ尿として排泄されます。

【働き】
腎臓は「血液の性状を基に、体内の環境を整える」ための臓器で、具体的には以下のような働きがあります。
・老廃物を尿として排泄する:尿素窒素やクレアチニンなど、体内でエネルギーを産生したあとの代謝産物を血液中から漉し取り、尿として排泄する
・水分、電解質のバランスを整える:ナトリウム、クロール(塩素)、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどの電解質のバランスを整え、血液の浸透圧(濃度)を一定に保つことで、体内の水分を保持する
・血液のpHを整える:体内では常に代謝で酸が作られているが、余分な酸は尿として排泄されるほか、腎臓で調節される重炭酸イオンと呼ばれるアルカリ物質によって体内の酸度を下げる
・血圧を整える:血液の流れが悪くなるとレニンという血管を収縮させるたんぱく質を分泌し、血圧を調整する
・赤血球を作る指令を出す:エリスロポエチンという赤血球の産生を促すホルモンを分泌する。
・骨を丈夫にするホルモンを出す:ビタミンDを活性化するホルモンを分泌して腸からのカルシウムの吸収を促進する。

腎臓の病気になると、これらの機能が低下して様々な症状が見られるようになります。

腎臓の病気

腎臓の病気は大きく急性腎不全と慢性腎不全に分けられます。
急性腎不全は中毒、感染症、出血、脱水、結石などによって腎機能が急激に低下する病気で、早急に原因を特定して治療を行わなくてはなりませんが、適切な処置を行えば回復の可能性があります。ただし、腎臓自体が損傷を受ければ慢性腎不全に移行していくこともあります。
慢性腎不全は、加齢や全身疾患により徐々に腎臓の機能が損なわれていく病気で、一度ダメになった腎組織が元に戻ることはありません。上記に示した腎臓の働きが弱くなっていくため、

・老廃物が排泄できなくなり、体内に毒素が蓄積していく(尿毒症)
・水分の調節が出来なくなるため、薄い尿を大量にするようになり、次第に脱水する
・高血圧になり、心臓や肺にも負担がかかるようになる
・造血ホルモンが出なくなり、貧血になる

などの症状が見られるようになります。

慢性腎不全の悪化予防

今のところ慢性腎不全には治療法がなく、なるべく悪化させないようにしていくしか方法がありません。そして悪化予防で一番大切なのが水分摂取と食餌療法です。
脱水しないようにするには、常に新鮮な水が飲めるようにしておくほか、食事をウェットフードにして食事からも水分を摂れるようにするとよいでしょう。
また、腎臓に負担をかけないようにするためには、たんぱく質の過剰摂取を避け、毒素を産生するような悪玉菌を減らすように腸内環境を整える成分(プロバイオティクス)が積極的に摂れるような食餌を心がけましょう。ミネラルバランスを整えるためリンとナトリウムを低減した療法食に替えたり、腸管内のリンや窒素代謝物を吸着する成分やオメガ3脂肪酸のサプリメントを摂るのもよい方法です。

まとめ

腎臓という臓器は一度壊れてしまったら治りません。腎不全の症状(多飲多尿、脱水、痩せてくる、など)が出てきたときにはすで半分以上が壊れてしまっていることも多いため、高齢になったら定期的な健康診断によって早期発見して、さらに普段から腎臓を守るような食生活を心がけるようにしましょう。