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ペットとの生活

ペット版 家庭の医学

第19回 “パテラ”ってなに? ~膝蓋骨脱臼について~

第19回 “パテラ”ってなに? ~膝蓋骨脱臼について~

膝蓋骨脱臼は特に人気小型犬で非常に多く見られる関節の病気です。見た目は何でもなくても、健康診断などで見つかることもあり、獣医さんに「パテラのグレード1ですね」などと言われたことのあるワンちゃんもいるのではないでしょうか。膝蓋骨脱臼とはどんな病気なのでしょうか?
もし愛犬が膝蓋骨脱臼と診断されたらどうしたらいいのでしょうか?

膝蓋骨脱臼ってどんな病気?

膝蓋骨とは膝のお皿の骨のことで、これを解剖学用語でパテラ(patellar)といいます。通常は大腿骨の正面にある溝の中に納まっていて、膝を曲げ伸ばしするときに付着している靭帯によって上下に動いて膝関節を安定させる働きがあります。しかし、生まれつき骨が変形していたり膝蓋骨に付着している靭帯の位置がずれていたり(先天性)、事故や栄養障害によって骨の形が変形する(後天性)ことによって、膝蓋骨が膝の内側や外側に外れてしまうことがあり、これを膝蓋骨脱臼といい、略してパテラと言われています。
先天性はトイプードルやチワワ、ヨークシャーテリア、ポメラニアン、シーズーなどの小型犬に多く見られ、たいていは膝蓋骨が内股のほうに外れる【内方脱臼】です。またゴールデンレトリーバーやバーニーズマウンテンドッグなどの大型犬にも時折見られることがありますが、その場合は膝蓋骨が外側に外れる【外方脱臼】のことが多いです。

どんな症状?

ごく初期の、膝蓋骨を支える靭帯が緩いだけの状態では臨床症状はほぼわかりません。
それから時おり膝蓋骨脱臼をおこすようになると、なんとなく歩き方が変(ガニ股や内股)になったり、歩きながら突然「キャン!」と鳴いたり、自分で元に戻そうとして足を後ろに伸ばす様子が見られるようになります。初期のころは外れたり戻ったりを繰り返しますが、頻繁に外れるようになると伸ばせなくなった後ろ足を使わずに3本足でスキップをするようになります。関節内で骨同士が擦れて炎症をおこすと強い痛みが生じることもあり、触られるのを嫌がるようになります。そしてさらに脱臼の程度が進行して常に外れたままになると足を曲げたまま腰を落として、歩けなくなってしまうこともあります。

検査と治療法

膝蓋骨脱臼の診断と病状の程度は主に触診とレントゲン撮影によって行われます。
触診では膝蓋骨の外れやすさと骨同士の接触の有無などを確認し、レントゲン撮影では大腿骨や脛骨の変形、変位がどの程度なのかを確認します。
脱臼が頻繁にみられ、歩くのが困難な場合は外科手術による治療が勧められます。
手術の方法はいくつかあります。
・先天的に内側にずれてしまっている場合、膝蓋骨を引っ張っている靭帯を
 まっすぐになるように脛の骨に付け替える(脛骨粗面転植)
・膝関節を包んでいる膜の一部を縫い縮めて靭帯が内側に行かないようにする(関節包縫縮術)
・膝蓋骨が本来収まるべき大腿骨の溝(滑車溝)を深く削ったり、溝の縁を高くして
 脱臼しないようにする(大腿骨造溝術)


どの術式を選択するのかは脱臼の程度によって検討され、複数の方法を組み合わせて行われることもあります。

予防と注意

まだ脱臼の頻度が軽度の場合や、高齢などの理由から手術が行えない場合には、なるべく膝関節に負担をかけないような環境づくりによって脱臼の頻度を抑えるようにします。
具体的には、
・フローリングのような滑りやすい床をコルクのような滑りにくいものに変更する
・ジャンプや回転など後ろ足に負担のかかりやすい運動は極力避ける
・来客などで興奮しやすい場合はクレートに入れて運動制限をする


などです。
また、過度の体重は関節に負担をかけるので、肥満気味の子はダイエットフードなどを使って減量する方法も検討されます。
関節炎や痛みが見られる場合には消炎鎮痛剤やサプリメントを使用することもあります。

まとめ

小型犬の膝蓋骨脱臼は遺伝的要因が大きいと言われており、子犬の成長期に既に症状が見られる場合もありますが、早期発見して気を付けて生活をさせることで悪化を遅らせることも可能です。普段からお散歩の様子や座った時の姿勢などに注意し、気になることがあれば獣医さんに相談してください。