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ペットとの生活

ペット版 家庭の医学

第22回 白内障について

第22回 白内障について

「最近愛犬がアイコンタクトをしてくれなくなったな」と思い、目を覗き込むと真ん中の奥が白く濁って見える、、、これは白内障という目の病気です。白内障は非常に多くの犬や猫で見られる比較的ポピュラーな病気ですが、気がついたら進行している病気のため、ついそのままにしてしまいがちです。人ではよく高齢の方が「白内障になったのでを手術した」という話をされていますが、ペットの白内障はどうしたらいいのでしょうか。

白内障とは

目を正面から見たとき、表面を覆っている透明な膜が角膜で、その下に光を絞り込む虹彩があり、虹彩の中央の穴から水晶体を確認することが出来ます。水晶体はレンズの役割をする器官で、本来は柔軟性のある袋に包まれた透明な細胞の塊ですが、それが何らかの原因で白く濁ってくる病気を白内障と言います。
白内障は進行性の病気で、始めは水晶体の一部がうっすらと濁って見える程度(初期白内障)ですが、徐々に進行すると水晶体の中に白い濁りが認められるようになり(未熟白内障)、やがて全体が青白くなり(成熟白内障)、最終的には水晶体の変性が進み、溶けて崩壊してしまう(過熟白内障)こともあります。

白内障の原因

白内障は水晶体のたんぱく質が変性して白く濁ってしまうために起こります。最も多い原因は、加齢に伴って紫外線や活性酸素の刺激が蓄積することによるものですが、外傷や糖尿病などの全身疾患、薬物による中毒などで引き起こされることもあります。
また、犬の場合は遺伝によることも多く、プードル、チワワ、コッカースパニエル、柴犬、ミニチュアシュナウザー、ラブラドール・レトリーバー、ボストンテリア、ダックスフントなど特定の犬種は生後数か月から数年とかなり若いうちから発症することもあります。

白内障になると

濁ったレンズから網膜に光が入りづらくなって視力が低下すると、特に薄暗い場所では歩くときに物にぶつかる、階段の上り下りを怖がる、急にびっくりする、あまり動きたがらなくなる、などの症状が見られるようになります。
しかし白内障初期は白濁も薄く、痛みなどもなく、また犬や猫は本来聴覚や嗅覚、ひげの触覚など視覚以外で行動していることが多いため、日常生活の変化はほとんどなく、家族は気が付かないことも多いようです。

症状が進行して重度の白内障になると、眼が白くなるのでそれと気が付きますが、過熟期になると水晶体自体が破裂して白濁部が小さくなることもあります。しかし緑内障やブドウ膜炎といった別の眼疾患を併発するようになると、強い痛みを伴い、涙が増えたり目をショボショボさせるような症状が見られます。

白内障になってしまったら

動物病院で白内障が見つかった場合、まずは白内障以外の病気が潜んでいないか全身のチェックをします。糖尿病や甲状腺機能低下症などの代謝性疾患が原因の場合もあるからです。また、白内障に併発しやすい眼の病気、ブドウ膜炎や緑内障、水晶体脱臼などの有無も確認して、今後の治療方針を決めます。
白内障の治療としては、手術で水晶体の白濁部を取り除き、代わりに人工レンズを入れる方法がありますが、年齢が非常に高い場合や前記の合併症がある場合は手術のリスクが高くなり適応ではないこともあります。
また、白内障の手術は眼科専門医による特殊な機材を使用したものとなるため、どこの病院でもできるわけではありません。
白濁の進行を遅らせる点眼薬や抗酸化剤のサプリメントもありますが、あくまで遅らせるだけで、白くなったものを再び透明にすることはできないので、できるだけ早期から始めることが大切です。

まとめ

初期の白内障を自宅で気づくのはかなり難しいことですが、進行してからでは手術も出来なくなり、内科的治療も手遅れになるため、特に遺伝的に白内障になりやすい犬種は定期的に動物病院で眼のチェックをしてもらうようにしましょう。